『早春がよみがえる』

1030/10000 2022 3月3日 木曜日
毎週木曜日は、◆子供らに寄せて
いつの世でも変わらないことはあるはず、
そのことをメモ書きしています。
合い間に私の来し方が入ります。



今日は太陽暦でお雛祭り、
ひな祭り=3月節句のことは
だいぶ前に書いた気がします。
月歴ではまだ先、4月1日になります。
早春のさんざめきが
当時よりもあざやかに
身のうちからよみがえってきます。
記憶にちゃんとプリントされているんですね。

今日は予定を変更して
生まれ故郷の早春を
思い出してみましょうか。
このトシになると
思い出すのは12歳まで暮らした
生まれ故郷のことばかりです。


春はフキノトウから始まりました。
ウロカの屋敷の立派な塀の前の日陰に
雪をとかして姿を現しているのを
見つけてみつめている私がいます。
このフキノトウは取って来なかったと思います。

かた雪はその前だったでしょうか?
桑の木の間を皆かた雪の上を歩いて
中学校に行ったものです。
かた雪になると歩けないところが
歩けるようになる解放感があります。
懐かしい。

最上川の岸近くに
ハンノキの木があって
(なにハンノキだったのでしょうか?)
そのバナナのような房、雄花が
妙に好きでした。


川原はんのき
これはカワラハンノキだそうです。
庭木図鑑 植木ペディアより

三月節句が近づくと
お母さんが『くじら餅』をつくります。
うるち米、と餅米の粉を挽いてもらって
水で練って寝かせて蒸したものです。
大きな鍋が流し(台所)にいくつも並びます。
味は味噌味、砂糖味、黒砂糖味、
くるみ入りもあります。
上には鮮やかな赤、緑などの飾り粉を
まぶしたりします。(これは我が家では
あまりやらなかったような気がします)
竈に羽釜をかけてお湯を沸かして
上に蒸篭をのせて
くじら餅の型に布巾を敷いて
強火で蒸します。
春のおやつはくじら餅一色となります。

ステーション・デパートで
通年売っているものではなくて
山形の大石田の川端で
月歴の三月節句に
お母さんが竈で蒸篭で蒸したのが
食べたい。

我が家のお雛様は
最上段のお内裏様とお雛様は
一番上の姉が生まれたときに
買った立派なもので
それ以外はバラエティなあれやこれやでした。
一つ一つの由来を聞いておくべきでしたね。


お供えには
寿司の脇に、鰊でした。
そのころニシンがよく獲れたのでしょうか。
魚好きの私、鰊は特に大好きです。
早春に鰊がセットで思い出されます。

今も残念に思っていることがあります。
それは、❝手提げおひなさま❞です。
父たちは出稼ぎ先から帰るとき
子供向けの雑誌をお土産に
持ってくることがありました。
それも丸ごと一冊ではなく
余ったのを寄せ集めて綴じたものでした。
出稼ぎ先で知り合った
そういう仕事をしている誰かから
譲ってもらったのでしょうか、
家で待っている子供たちにと
その時の父と兄たちの心を思うと
じ~んとなります。
月刊誌を買ってくれるような
家ではありませんでしたし。

その中に『小学一年生』かなにかの
付録の『手提げお雛さま』があったのです。
それは、手提げの形をしていて
開くと立体になってお雛さま一揃いが
雛壇に並ぶというワンダフルなものでした。

家を出るとき大好きだったこの
手提げお雛さまを持ってきて
三月節句には取り出して飾っていました。
それが度重なる引っ越しで
いつのまにかなくなってしまいました。

ひな壇に飾られた雛人形のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや




その移り変わりではなくて
そのこと一つの由来、
when,who,whom,where,why,
そしてhow, 関わった人々のその時の思い
いまならhow muchも加えて
そのことに思いを馳せることが
できるようになったのも
トシをとることの恵みではないかしら、
今年の早春の思いです。




日本華道院十勝支部の方々の展覧会にて。
許可を得て撮影いたしました。